佐賀県武雄(たけお)市は、公民館で地域の人々が集まるカフェを運営する地域おこし協力隊「まちのコミュニティ焙煎士」の募集を開始しました。活動地域の武内町(たけうちちょう)の人々を中心に、多種多様な人たちが、目的や理由がなくてもふらっと立ち寄れる「コミュニティカフェ」を運営する仕事です。詳しい業務内容と“推し”ポイントをチェックしていきましょう。
コミュニティ+カフェ?
「コミュニティカフェ」と聞いて、どんな場所をイメージしますか?企業が運営するカフェチェーン店や喫茶店のように、収益を上げることが目的の店舗ではありません。地域住民の交流や、情報共有の拠点となることを目的としてつくられる場。それをコミュニティカフェと呼びます。地域によって、飲食メニューの提供をしていたりワークショップを開催していたりなど、運営の形態はさまざま。
武雄市が武内町につくりたいコミュニティカフェは、地域の方々の「○○がやりたい」といった声や、おもしろいムーヴメントの種になるようなお話が、自然と交わされる場所です。リラックスした雰囲気の中だからこそ出てくる発想やアイデアを、これからのまちづくりに活かしていきたい。今回の企画には、そんな思いが込められています。会議室ではなくて、カフェから始まるまちづくり。でも、どうやってかたちにしていけばいいのでしょうか?
How to “焙煎”
舞台となるのは、武雄市の中でも美しい田園が広がる武内町(たけうちちょう)地区です。その中で地域コミュニティの中心的な役割を担っている「武内公民館」が、コミュニティカフェをオープンする場所。清潔感のある建物で、大小ある部屋はサークル活動やイベントなどに使用されていて、窓の向こうにはマルシェやキャンプが実施できそうな敷地が広がっています。他にカフェや飲食店のないエリアだから、これからつくるコミュニティカフェは、武内町の内外から人が集まる場所になる可能性大。プロセスは、こんなイメージです。
<ステップ1>
今はまだ、カフェのない公民館です。地域おこし協力隊もいません。テーブルやイスを置いて、飾りつけをして、あなたらしい「カフェづくり」にチャレンジしてください。スペースと予算は限られていますが、活動費の範囲内で必要なものは購入できます(要相談)。
\ 推しポイント /
【カフェめぐりができる】
活動中、武雄市と周辺にあるカフェの中から、参考になりそうなお店に行ってみることができます。お客さんの様子をチェックしたり、店主のお話を聞いたりして、カフェづくりのヒントを探してください。……とは言え、事前に担当者さんの承諾は必要です。活動費の範囲で「視察」として行くことになるので、ルールをしっかり守って楽しく学びましょう!
<ステップ2>
やはり、リラックスした雰囲気が大切ですから、おいしいコーヒーを淹れましょう。もちろん、やってきた方によっては、お茶や別の飲み物を提供しても構いません。喫茶店のように、甘いものを添えても◎。コーヒーは無料で提供する「フリーコーヒー」を予定しています。コーヒー豆やお菓子などの仕入れにかかる費用は、活動費を使用することになるため、担当者さんと相談しながら進めるようにしてください。
\ 推しポイント /
【コーヒーの淹れ方が学べる】
無料とはいえ、おいしくなかったら残念です。きっと会話も弾みません。今回、武雄市内の自家焙煎をしているコーヒー屋さんから直々に、プロフェッショナルなおいしいコーヒーの淹れ方を教えてもらえます。(チャレンジしたい人は、自家焙煎にも!)
<ステップ3>
コミュニティカフェを知ってもらうために、公民館に足を運んでもらえるイベントをやってみましょう。1人で企画したことがなくても大丈夫。経験豊富な公民館のスタッフさんが付いています。
\ 推しポイント /
【イベント企画のノウハウが得られる】
企画、集客、運営。都会とは異なる特性を持つ田舎で、イベントをやり抜く力を身に付けることができます。これは協力隊卒業後にも活かせるスキルです!
<ステップ4>
おいしいコーヒーや楽しいイベントで人を集めたら、あとはおしゃべりをするだけ……ではありません。アンケートをとって、声をかたちに残しましょう。「やりたい」声を掲示板に張り出してシェアすれば、誰かが見つけて発展していくかも。
\ 推しポイント /
【地域コミュニティの中心的人物になれる(かも)】
コミュニティカフェを介して人々はつながりを育んでいく。つなぎ役のあなたは誰にとっても大切なハブ的存在です。地域になじむためには、うってつけの仕事ではないでしょうか。ご縁とともに、未来も広がっていきそうです。
「まちのコミュニティ焙煎士」が焙煎するもの
これまで武内公民館では、まちづくりのためにさまざまなイベントを行ってきました。しかし、幅広い層へアプローチすることや、地域の自発的な活動までつなげることは難しいのが現状です。武雄市は、進学や就職で武内町を離れた若者が、20代で戻ってくる割合が比較的多いまちです。ところが、戻ってきて暮らす場所は、生まれ育った地元ではなく、市の中心地を選ぶ傾向にあります。武内を離れたら、武内に帰ってきてほしい。「帰りたい」と思える地域にするには、何が必要なのでしょうか。
今回の地域おこし協力隊の担当者・武雄市生涯学習課の古賀さんに聞きました。
「私たちは、武内町の未来について話しあい、地域の人たちの『こんなことをやりたい』という声をもっと聞く必要があると考えました。武内町には人が集まれる場所が少なく、そもそも人が集まって話す機会に乏しいのが現状です。コミュニティカフェをオープンすることによって、まずは地域の人々が気軽に集まれる場所をつくります。そこで生まれる交流やつながりの中から、地域の人々が自発的にまちづくりに取り組んでもらうことが、この事業の目的です。移住者である地域おこし協力隊なら、私たち地元民が当たり前だと思うことも当たり前じゃないかもしれません。隊員の方には、今までの地域にはなかった感覚と視点で人々と向き合って、たくさんの『やりたい』声を引き出してほしいなと思っています。力を貸してください」
例えば、見とれるほど美しい里山の景色も、そこに暮らす人々の温かさも、武内町の人々にとってはありふれた風景です。地域の「日常」を「特別」だと思えるのは、地域おこし協力隊ならでは。まずは、コミュニティカフェに訪れた人たちの話に耳を傾けることが、活動のスタートになるでしょう。「まちのコミュニティ焙煎士」が焙煎するもの、それはコーヒー豆ではなくて、武内町の人々のことです。
武内町を愛する、ゆかいな仲間たち
古賀さんに、武内町で暮らしているプレーヤーたちを紹介してもらいました。地域おこし協力隊として着任した際は、心強い味方になってくれるはず。
「まずは、宮原 遊(みやはら ゆう)さん。サウナが好き過ぎて、自宅の裏にプライベートサウナを設置しちゃった宮原さん。その行動力とアイデアは周りの人を驚かせ、楽しませてくれます。興味を持った事に対する熱量は半端ありません。『これ、おもしろいでしょう!』と、ニヤリと笑いながら話す宮原さんが大好きです」
「望月 美都輔(もちづき みずほ)さん。 お寺の坊守※さんで、篠笛奏者としても活躍されており、その音色を聴くと凛としながらも心地よい雰囲気に包まれます。そういった芸術面だけではなく、地域に根差した活動にも力を入れてあり、お寺を会場に様々なイベントを企画・運営されています。気さくでありながらも芯のある振舞いをいつも尊敬の眼差しで見ています」
※坊守(ぼうもり)…主に浄土真宗のお寺において住職の配偶者のことを言います。
「山口 真哉(やまぐち しんや)さん。武内町の少年野球団の監督をされている山口さん。『こらー!ちゃんとせんかー!』と檄を飛ばす様子はちょっと怖め。でも笑った時のクシャっとした笑顔が山口さんの性格を表しています。野球部の子どもからや保護者からはもちろん、色々な人に慕われている山口さん。様々な場面で相談に乗ってくれる頼れる存在です」
「野田 尚之(のだ なおゆき)さん。武内町の星空に惚れ込み移住された野田さん。プロのカメラマンで、写真はもちろん、ドローンや動画、さらには映画まで作っちゃう凄い方。そんな凄い人なのに、とてもフレンドリーでお茶目。家は民泊施設として運営し、ゲストの人は天体観測が体験できるそう。公私ともに憧れる生活を堪能されているプロフェッショナル」
全員おもしろそうな人たちばかりです。何よりも、古賀さんのプレーヤーたちに対する愛とリスペクトを感じました。ご紹介した皆さんには、今回の地域おこし協力隊の募集について説明済とのこと。このように、あらかじめ地域の方が活動を理解していてくれると、着任してからスムーズに活動を始められそうです。武雄市で地域おこし協力隊になる推しポイントのひとつと言えます。
暮らしのこと
「まちのコミュニティ焙煎士」着任後の居住地は、武雄市の中心部付近が予定されています。市の玄関口になっている武雄温泉駅には新幹線も発着。周辺にはスーパーや飲食店などがあるため、日々の買い物や食事に困ることはないでしょう。勤務地の武内公民館へは、車でおよそ15分。武雄市が用意する公用車での通勤および活動となるため、業務上は自家用車がなくても問題ありません。ただし、休日の移動のしやすさを考えると、車があったほうが便利です。
\ 推しポイント /
【生活に便利なお店がたくさんある】
環境の変化は身体への負荷が大きいもの。武雄市なら、ライフスタイルを大きく変えずに、地域おこし協力隊をスタートすることができます。Amazon?もちろん届きます。
なお、活動任期の途中で武内町へ居住地を移すことも可能です。「ローカルに飛び込みたい」という方も大歓迎。コンビニやスーパーはなくても、美しい自然があります。
武雄市の様子は、現役の地域おこし協力隊・山崎さんがSNSで発信をしています。
YouTube「たけおんちゃんねる」https://youtube.com/@takeon_channel
今回、特別にカメラマンの野田さんより武内町の写真をいくつかお借りしました。
担当者・古賀さんから一言
「武内の人は最初は恥ずかしがり屋だけど、懐に入ればとても人懐こく親身になってくれて絆が強い。協力隊の方には武内のことを深く知って、たくさんの人に出会って、ここへ来てよかったなと思ってもらえたら。武内での活動を通して、自分のやりたいことやいいなと思うことも見つけてほしいです」
コミュニティカフェを通して地域の人々の声を拾い、実現のきっかけをつくる武雄市地域おこし協力隊「まちのコミュニティ焙煎士」。それは武内公民館で生まれた、今までに存在しなかった仕事。古賀さんや仲間たちと一緒に、挑戦してみませんか?
◎武内公民館のインスタグラム
https://www.instagram.com/takeuchikouminkan__takeo/
\ 活動内容 /
①コミュニティカフェの運営
着任後半年以内にカフェをオープンする予定です。
・コーヒー(無料)と軽食(既製品)等の提供
・資材の調達、準備等
・コーヒーの淹れ方や焙煎を学ぶ研修会への参加
②イベントの企画
カフェへの集客、武内町への関心UPを目的に、イベントの企画・運営をしていただきます。
・イベント例:ボードゲーム会、占い、マルシェ、ドッグラン、ラジコン大会、サイクリング、のど自慢大会など
(実施回数)
1年目:オープンイベント、以降月1回程度開催
2~3年目:月1回程度開催
③やりたいことの声を拾う
町民のまちづくり参画のきっかけづくり、また後押し、人材発掘・育成を目的とし、カフェで提供する無料コーヒーの対価として、町民の声をひろうアンケートをとっていただきます!
・地域の人たちの「やりたいこと」を集めて、月ごとにまとめる。
・まとめた「やりたいこと」を公民館や地域団体に伝える。
・アンケートをもとに、公民館主催や地域の方が主催となりイベントを実現する場合がある。
④情報発信
・公民館(カフェ)に掲示板を設置
・SNS運営 武雄市外の人向け、週2回~、イベント告知など
・公民館だよりの1コーナーを担当(月1回)
⑤地域とのつながりづくり
・地域になじむ
→キーパーソンへの挨拶、地域イベントへの参加
・公民館関連行事への参加
→講座やスポーツ協会イベントに運営側として協力する
⑥事務
朝礼(毎日)、担当者との打ち合わせ(週1回)、振り返りミーティング(月1回)、日報作成
⑦その他
地域での集まり(飲み会など)には、無理のない範囲でできるだけ参加していただきたいです。
■活動の流れ(イメージ)
カフェの営業は週3回を想定しています。
〈1日の流れ〉
・昼カフェ営業・カフェ営業がない日の場合
8:30 出勤、朝礼
9:00~11:00 営業準備、SNS発信など
11:00~16:30 カフェ営業又は研修・イベント企画など
16:30 退勤
・夜カフェ営業の日の場合
14:00 出勤
14:00~18:00 営業準備、SNS発信など
18:00~21:00 カフェ営業
21:00~22:00 片付けなど
22:00 退勤
〈1週間の流れ〉
月 休み
火 イベント企画や研修など
水 昼カフェ
木 夜カフェ
金 イベント準備など
土 昼カフェ(イベントの場合あり)
日 休み(イベントの場合あり)
〈3年間のイメージ〉
◎1年目
前半(0~6か月)
・地域の人との友好な関係性の構築
・カフェ開店までの準備
・カフェ研修(コーヒーの淹れ方、焙煎、接客等を学ぶ)
・SNS発信
後半(7~12カ月)
・地域の人との友好な関係の構築
・カフェ開店
・集客イベントの実施
・SNS発信
・活動報告会(カフェ6か月記念イベント)の開催
◎2年目
・カフェ開店
・集客イベントの実施
・SNS発信
・活動報告会(カフェ1年6カ月記念イベント)の開催
◎3年目
・カフェ開店
・集客イベントの実施
・SNS発信
・活動報告会(退任時)の開催
\ 募集要項 /
■募集人員
1名
■勤務地
武雄市武内公民館、研修先(市内カフェ等)
■勤務体系
会計年度任用職員(パートタイム、副業可)
■勤務時間・休暇
週5日、週35時間
有給休暇最大10日(夏季休暇、年末年始休暇あり)
■報酬
月額223,367円 (別途時間外手当、賞与あり)
〈必須スキル〉
・普通自動車免許
・Word、Excel、PowerPointが使える
・笑顔がすてき
・人の話をしっかり聞ける
・素直で前向き
・行動力、積極性がある
〈歓迎スキル〉
・おしゃべり上手
・コーヒーが好き
・企画を考えられる
・SNS(Instagram)を使える
・コミュニティ運営経験がある
・飲食店勤務経験がある
■募集期間
令和6年11月4日まで
\ リンク /
◎武雄市ホームページ
https://www.city.takeo.lg.jp/information/2024/09/013924.html
◎JOIN(移住・交流推進機構)
https://www.iju-join.jp/cgi-bin/recruit.php/9/detail/63362
\ オンライン説明会&交流会 / (アーカイブ)
応募を考えている方を対象に、Zoomを使って実施しました。
今回の担当職員・古賀さんが直接、募集内容について説明をするほか、武内町や武雄市の雰囲気もお伝えしています。
リンク:https://youtu.be/0dA9K_UE5rw